RISU_TOP.GIF - 4,722BYTES  森崎孝

博士論文:「光機能性液晶中の光波伝播解析」

博士論文要旨

 本研究では,色素ドープ液晶の大きな光学的異方性に着目し、レーザー照射に伴う光誘起型レンズの形成過程及びその光伝播特性について詳細な解析を行っている.本論文は5部で構成され,以下の通りである.第1部では,本研究の目的と新規性を論じ,本研究の意義を述べている.第2部では,液晶の特性と本研究で用いた液晶セル構造と使用した理論解析法について述べている.液晶の特性については,本研究において,特に重要である光熱効果及び自己位相変調効果に着目し、光誘起レンズの形成過程について概説している.理論解析法については,液晶が光により受けた熱量を解析するために用いた3次元熱伝導解析法,光学計算として,スカラー回折計算であるキルヒホッフ回折積分と幾何光学計算法である光線行列法,更にベクトル解析法である時間領域差分法 (Finite-Difference Time-Domain ( FDTD ) method)の液晶素子への適用について説明している.第3部では,光誘起型液晶レンズの形成過程とその光伝搬特性について,実験と光学計算の比較による考察を行っている.一般的な考察に続き、光伝播特性の色素ドープ液晶素子の液晶層厚依存性及びドープ色素濃度依存性についての詳細な説明を行っている。第4部は,FDTD法による光機能性液晶素子内部の光伝搬特性解析への有効性について述べている.光誘起型液晶レンズについて,測定結果,光線行列結果とFDTD解析結果の比較により,FDTD 法を光機能性液晶素子の光伝播特性解析に応用し,その有効性について述べている.第5部では,光誘起液晶レンズが光?光制御素子の応用として非常に有効な素子であることが述べられ,更に,小型化・多機能化の進む光機能性素子の光学特性解析にFDTD法が非常に有効な手段であると結論づけられている.以上のように光機能性素子の作製から定量的な解析を通して行うことにより,光?光制御素子としての有効性と,FDTD法の光機能性素子への応用を論じている.よって,本論文は博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.


博士課程研究計画

1.背景および目的
 液晶は、高い誘電率・屈折率異方性と液体流動性が共存したユニークな光・電子機能性材料であり、種に表示体としてすでに実用化されている。また、液晶は、光などの外場によって容易に分子配向を変換することが可能であり、光による屈折率の制御を行うことによって、フォトニクス分野での応用が期待されている。光によって液晶の屈折率を制御する方法としては、種に以下の4つが提案されている。(1)光異性化反応による液晶配向状態の変化、(2)光電界トルクによる液晶分子再配列(Janossy効果)、(3)光電荷発生による光空間電界による液晶分子再配列(フォトリフラクティブ効果)、(4)光吸収に伴う発熱による液晶分子秩序度の制御(光熱効果)。このような背景を踏まえ、「液晶の光による位相制御と光学理論」と題し、光によって位相制御された液晶中の光伝播過程を実験および理論によって検討することを目的とする。

2.準備状況
 現在までに、我々の研究室では、液晶の光による位相制御法として光熱効果に着目し、(1)光熱効果による自己位相変調効果に起因する自己回折光の解析、(2)3次元熱伝導解析法による定常・非定常光熱効果の解析、(3)液晶凸レンズの光制御、などの研究を行ってきた。現在、修士課程でのテーマの一環として、「光誘起凸レンズを用いた光コリメーション」「光誘起凹レンズ形成とその詳細解析」について成果を挙げてきた。これらの研究成果は、すでに研究論文として公表されている(Jpn. J. Appl. Phys. 41, L361, 2002)。

3.今後の展望
 現在までに行ってきた、光による色素ドープ液晶の位相制御の解析では、主に、古典的回折理論やレンズ結合理論による光学的解析を行ってきた。これらの解析方法では、光波の伝播方向の空間的位相変化が無視されている。色素ドープ液晶の高効率非線形光学効果の応用は、多彩であると考えられ、実時間ホログラフィや非線形光導波路などへの展開が考えられる。これらの光学的応用を考えた時、より現実に近い光学的解析を行う必要がある。そこで、博士後期課程では、FDTD法を用いた、より詳細な解析方法の確立を目指し、光誘起回折格子からの回折像の同定や非線形光導波路中の光伝播過程の解析に応用する。

修士論文:「ゲスト・ホスト液晶への光熱レンズ書き込みとレーザーコリメーションへの応用 

 

(査読論文)

1. All-optical beam collimation by means of dye-doped liquid crystals.
H. Ono and T. Morisaki
Jpn. J. Appl. Phys. 41 (2002) L361-L363.
2.

Characteristics of optically controllable focusing lens generated in guest-host liquid crystals.
H. Ono, M. Yoshida and T. Morisaki
Opt. Commun. 211 (2002) 309-318.

3.

Analysis of the Laser-Induced Lens Generated in Guest-Host Liquid Crystals.
T. Morisaki and H. Ono
Electronics and Communications in Japan Part 2, 87 (2004) 10-19.

4. Effects of polarization on light propagation in laser-induced lens in guest host liquid crystals.
T. Morisaki and H. Ono
J. Appl. Phys. 95 (2004) 3279-3284.
5. Light propagation in laser induced liquid crystal lens.
T. Morisaki and H. Ono
Advances in Technology of Materials and Materials Processing, 6 (2004) 124-129.
6. Electromagnetic numerical characterization of the laser-induced liquid crystal lens by mean of finite-difference time domain method.
T. Morisaki and H. Ono
Advances in Technology of Materials and Materials Processing, 7 (2005) 17-22.

(口頭発表)

1. 2001年10月 電子情報通信学会信越支部大会講演論文集 225-226
色素ドープ液晶の高効率非線形光学効果と光コリメーションの試み
森崎孝、吉田真、柴田和明、小野浩司
2. 2002年3月 第49回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)1175
色素ドープ液晶の高効率非線形光学効果による屈折率変化分布の計測
森崎孝、小野浩司
3. 2002年9月 第63回応用物理学会学術講演会予稿集(第3分冊)1130
色素ドープ液晶の高効率非線形光学効果に伴う光誘起凹レンズの光波伝播特性解析
森崎孝、小野浩司
4. 2002年10月 電子情報通信学会信学技報 OME2002-66 OPE2002-67, 102 (2002) 45-50
色素ドープ液晶への光誘起凹レンズ形成
森崎孝、小野浩司
5. 2003年3月 第50回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)1378
ゲスト・ホスト液晶中の光誘起レンズによる偏光依存性
森崎孝、小野浩司
6. 2003年12月 Optics Japan 2003 講演予稿集12-13
FDTD
法を用いた光誘起液晶レンズ内の光伝播特性解析
森崎孝、小野浩司
7. 2004年1月 The 4th International Symposium on the 21th Century COE Program of Nagaoka University of Technology, Nagaoka, Japan.
Light propagation in laser-induced liquid crystal lens.
Takashi Morisaki and Hiroshi Ono
8. 2004年3月 第51回応用物理学関連講演会予稿集(第3分冊)
光誘起液晶レンズのFDTD法による解析
森崎孝、小野浩司
9. 2004年3月 第51回応用物理学関連講演会予稿集(第3分冊)1419
光誘起液晶レンズのFDTD法による解析
森崎孝、小野浩司
10. 2004年8月 The 5th International Symposium on the 21th Century COE Program of Nagaoka University of Technology, Bangkok, Thailand.
Electromagnetic numerical characterization of the laser-induced liquid crystal lens by mean of finite-difference time domain method.
Takashi Morisaki and Hiroshi Ono
11. 2004年9月 第65回応用物理学会学術講演会予稿集(第3分冊)1124
光誘起液晶レンズのFDTD法による解析U
森崎孝、小野浩司
12. 2005年1月 生体機能・情報処理シンポジウム予稿集 69-76
光誘起型液晶レンズの光伝搬特性解析
森崎孝、小野浩司
13. 2005年8月 The 7th International Symposium on the 21th Century COE Program of Nagaoka University of Technology, Penang, Malaysia
Detailed characteristics of laser-induced liquid crystal lens.
T. Morisaki and H. Ono
14. 2005年10月 電子情報通信学会信越支部大会講演論文集 249-250
光配向法により作製した回折格子液晶セルのFDTD法による解析
関口拓也、森崎孝、小野浩司、川月喜弘
15. 2005年11月 Optics Japan 2005
時間領域差分法による液晶散乱素子の光散乱特性解析
森崎孝、関口拓也、小野浩司、川月喜弘
16. 2006年3月 第53回応用物理学関係連合講演会予稿集 第3分冊 1343
時間領域差分法による光架橋性高分子液晶散乱体の光透過特性
森崎孝、関口拓也、小野浩司、川月喜弘
17. 2006年11月 電子情報通信学会有機光エレクトロニクス研究会 技術研究報告 13-18
FDTD
法による液晶偏光回折格子の光波伝搬解析
関口拓也、森崎孝、小野浩司、川月喜弘

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